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修善寺のまちに癒しの舞台をつくる

伊豆市

修善寺のまちに癒しの舞台をつくる

修善寺で新しいチャレンジをしている方をご紹介します。

今回は、修善寺の「対山荘の若女将」庄司美貴さん。
温泉街にたたずむノスタルジックな宿でお話を聞かせていただきました。

◆プロフィール
庄司美貴(しょうじ みき)さん
伊豆市修善寺出身。デザイナーズ和モダン旅館「ねの湯 対山荘」の若女将。大学在学中から現社長の母親と二人三脚で宿の経営を支える。
修善寺温泉街の活性化に取り組むコトコト企画室社員。
ねの湯 対山荘
静岡県伊豆市修善寺883
昭和27年創業。客室数11室。

◆『癒しの場』を提供したい

–落ち着いた雰囲気で、女性のお客さんから人気がありそうな感じですね。

庄司さん そうですね。対山荘を創業したのは祖父ですが、祖父が亡くなった後、祖母、母が経営者となり、女性が仕切る経営が続いています。結果的に女性目線の配慮はあったと思いますが、女性向けのコンテンツのほうが作りやすい面もありますね。

–庄司さんが女将の3代目なんですね。対山荘のこだわりを教えてください。

庄司さんアートを観るように滞在を楽んでもらう」ことをコンセプトにしています。以前、調べたときにストレス緩和の最終手段が「旅行」ということを知りました。そんな方々に「癒しの場を提供したい」と思い、10年前から本物にこだわった「宿の世界観」を大切にしています。

例えば、無料サービスで提供しているマニュキアも日本最古の絵の具屋さんが手掛けた商品を置いています。普通であれば、シンナーの香りが残るんですが、貝殻を素材にした香りのないものを使っています。当初は、現経営者の女将から「持って帰られてしまうかも」という懸念があり、導入できませんでした。それでも、本物しか受け入れられない時代に「普通に安いものを提供したくない」という思いが強くありました。

私のなかに、できるならば「時代を引っ張ることをやりたい」と思いがあります。ただ、早すぎると受け入れられないので、絶妙なラインを狙う(笑)。これはトライ&エラーで繰り返しやっていくしかないですね。

◆『対山荘の世界観』をつくる

-これまでにどのようなチャレンジをされてきたんですか?

1.古いものに価値を残す

庄司さん 10年ぐらい前に宿の大規模なリニューアルを行いましたが、こだわったのは「古いもの」をうまく使うこと。創業当時の資材をそのまま使ってくれる建築家を探しました。

普通であれば建替えたほうが、建物の持ちもよくなります。
それでも、修善寺という歴史あるまちの宿として、後世に残していくことも大切だという思いがありました。旅行者や海外の人が見たときに「風情がない」、「心に残らない」と思われてはもったいない。

価値あるものを残すため、あえて「建替えない」という選択をし、旧旅館の資材をできるだけ活用して、新しい旅館に生まれ変わらせました。

2.細部にまでこだわる

庄司さん 宿の世界観を大切にするために、お客さんの目に見えるものも、見えないものも細部までこだわりたいと思っています。

お風呂で言えば「f分の1のゆらぎ」の仕掛けです。水面に水滴を垂らすと波紋のように広がっていくと思いますが、人が自然とリラックスできるゆらぎがあります。人間にとって、キャンドルの炎や波の音と同じように、このf分の1のゆらぎを感知すると、心地よくなると言われています。

部屋で提供しているキャンドルもこだわりの一つですね。
安全面を考えれば電気のキャンドルがいいかもしれません。それでも、本物を求めるのであれば、やはり炎のあるリアルなキャンドルが一番です。

部屋にあるちょっとしたものでも、簡単に買ってきたものを置くという感じにはしたくないですね。例えば、花瓶に挿す花にしても、近隣の山から採ってきた季節の植物を挿すようにしています。このまつぼっくりも、こんなサイズはなかなか見つからないですよ。気になる人が気づいていただければうれしいですね。

グラス1つにしても「心をこめて選んでいる」と思われるものを提供したい。そんなに高い備品でなくても、温かみのあるものを選ぶとか、より丁寧に選ぶようにしています。どんな備品を買うときでも「私に声かけて。勝手に買わないで」と伝えています(笑)。

3.従業員を甘やかす

庄司さん これはチャレンジと言えるかわかりませんが「従業員を甘やかすこと」。自分も甘いんですが、経営者の母親もとてもやさしいんです(笑)。

従業員には「嫌いなことや苦手なことはやらなくていい」と伝えています。人には得意・不得意があるので、得意なことをやってもらう。ある人が「できない」ということでも、他の人は「私は大丈夫」ということが多いものです。まあ、なかなか普通の会社にはやりにくいとは思いますが。

–それは、従業員とのコミュニケーションがうまくとれているからできることかもしれませんね。

庄司さん そうですね。私が甘すぎて、従業員が育ってくれているのかも(笑)。ただ、採用面接のときに「和をもてる人かどうか」を見ています。私自身が「身近な人から幸せにしたい」と思っていますので「仲良く働けること」に賛同いただける方に働いてもらっています。
従業員は、長く勤める人も多く、70代や80代の方も多い。勤務のシフトは無理をせず、負荷をかけない工夫をしています。

◆チャレンジの苦労とこれから

–新しいことに取り組んだときに、苦労したことはありますか?

庄司さん うーん。そうですね。実は、料理にベジタリアン対応ができないか検討したときに、料理長とぶつかったこともありました。無添加の野菜とか流行っていたのでいろいろ検討したんですが・・結局、実現には至りませんでした。このときも「和」を大切にしたい想いから、無理はしませんでしたね。これまで大きな失敗がなかったのは「和」を大切にしてきたからだと思います。

–これから取り組みたいことはありますか?

チルい場づくり」なんかはチャレンジしたいですね。
–「チルい」ですか!?

若い人が使う言葉で、英語のチルアウトから由来した言葉で、まったりする、くつろぐという意味の表現です(笑)。イメージとしては、夜のカフェとかでコーヒーを飲みながら、仲間と一緒に過ごす時間を大切にしている空間とかですね。ライトアップされた修善寺の足湯につかりながらお酒をゆっくり飲むのも同じイメージですね。
ネット検索で「チルアウト 素泊まり」とかで調べて「対山荘」が出てくるようになったらうれしいです。 

◆修善寺でのビジネスの魅力

–修善寺でのビジネスの魅力は、どんなところだと思いますか?

庄司さん 修善寺は1200年の歴史が続いているまちだからこそ、ビジネスを長く続けたい人には良いまちだと思います。そして、本物を提供するのにふさわしいまちだと思います。
海沿いのようなライトな感じではなく、山にある奥ゆかしさとか、ちょっとノーブルな感じもあるのかも。宿泊先に1泊数万かけて泊まる人が多いまちなので、そういうお客さんに価値が提供できるビジネスができるかどうかですね。

最後に、これから伊豆・修善寺で創業したい人にアドバイスをお願いします。

庄司さん 修善寺の地域は、外に対する警戒心が強いところがあるのかも。
それでも私の祖父、祖母ともに修善寺出身ではなかったけれど、自分の道を正しいと信じてやっていれば、50年、60年と続けられている。いろいろ言われることはあるかもしれないけど、自分が正しいと思うことを続けられればいいと思います。

あとは・・・このまちに価値を残していける人がもっと増えてほしいです。まだまだ足りないなあと感じています。ぜひ、時代を引っ張る人に来てほしいですね(笑)。

–今日はありがとうございました!

◆インタビューを終えて

庄司さんは、和やかな雰囲気を醸し出しながらも、歴史ある修善寺のまちで女将の三代目として宿を構える「芯の強さ」を感じました。

それは、インタビューのなかで何度も出ていた「宿の世界観」という言葉に凝縮されている。その世界観をお客さんに提供するためには妥協は許さない、そんな凛とした姿勢がちらちら見えた気がします。

チャレンジを続ける庄司さんの「修善寺のまちに癒しの舞台をつくりたい」という言葉が印象的でした。

まえだかつ

伊豆半島にあこがれる旅好きの方向音痴。旅先ではレンタサイクルでまちを走り回る。旅の書は「深夜特急」。伊豆で暮らし、働く人たちの魅力を発信します。傾聴と問いかけを大切にしたいシニア産業カウンセラー

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